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夜明けを見る会

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カラスと高杉晋作

 「三千世界の鴉を殺し、主と朝寝をしてみたい」という都々逸があります。これは高杉晋作が作者であるとされています。(木戸孝充という説もある)
一般的な説明は、明け方になりカラスがうるさく鳴くとあなたを起こしてしまう。このカラスをみんな殺してしまえばあなたとゆっくり朝寝ができるのに、と遊女の気持ちを男の高杉晋作が作ったのだとされています。(高杉晋作は弱冠27歳くらいで亡くなっているはずですから、本当だとすればけっこう遊び人、、、)

 この都々逸の初出は、明治31年に出たラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の"GLEANINGS IN BUDDHA-FIELDS" (佛の畠の落穂)であるらしいです。「長州の木戸の作」として
「三千世界の鴉を殺し 主と添寝がしてみたい」 
This my desire: To kill the crows of three thousand worlds,
And then to repose in peace with the owner of my heart!
と翻訳されているといいます。
(木戸孝充だとすれば44歳くらいまでご活躍のはずだからそんな世界もよくご存知かも、、、)

 なお三千世界とは仏教用語で三千大千世界(さんぜんだいせんせかい)ということらしいです。一人の仏の教化する世界。須弥山(しゆみせん)・日・月・四大州・上天の一世界を千集めたものを小千世界、それを千集めたものを中千世界、中千世界を千集めたものを三千大千世界という。三界の事。
まあ「とてもたくさん」ということだそうです。

 しかしこんな解釈もありました。
遊女が起請文で貴方と一緒になりますという約束を書くのは、牛玉宝印(ごおうほういん)というお守りの紙の裏に書く。
そしてこの牛玉宝印は熊野神社のものが多く、これには八咫烏(やたがらす)が描かれている。
カラスは熊野神社のお使いであり、この起請文に書いたことを破ると、熊野のカラスが三羽死に、自分が死んで地獄に行った時にそのカラスに約束を破った罰で責められる。
また、遊女は明六つ(ちょうど「夜明け」の時間)には客を送り出さなければいけなかったのでゆっくり寝てもいられない、というお約束もあった。
つまり「三千世界の鴉を殺し」とは「他の客の約束なんて反故にするから」、「主と朝寝がしてみたい」は「あなた、身請けしてちょうだいよ」だとする説であります。

でもとてもこんな都々逸の世界に浸る余裕なんてありませんね、残念!

で、何を言いたかったかと言えば、高杉晋作の時代、つまり幕末の頃でもやはり「夜明け」のカラスはやかましかった、ということです。

落ちは「カラスだけにcrow話し」な~んて古い駄洒落で〆てみましょうか。
by yoakewomirukai | 2009-02-11 21:15 | 薀蓄